膝下腿外旋症候群
○ 下腿外旋症候群とは
下腿外旋症候群は LCS を基盤とした膝完全伸展位における下腿の外旋異常から生ずる様々な整形外科的疾患を括った概念である。
Contents
はじめに
膝関節は大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節に分類される。
下腿外旋は大腿脛骨関節の運動であり, 脛骨の外旋は脛骨粗面の外方移動を伴うことから、Q-angle の増大をもたらし、 膝蓋大腿関節のアライメントに影響する。
○ 下腿外旋症候群って?
下腿外旋症候群は、 膝伸展に伴う下腿外旋が増大する事に起因する種々の疾患を括ったものである。
つまり、大腿骨に対して脛骨が(下腿)外にねじれている、つまり外旋していることをいいます。
下腿外旋症候群を起こす、LCSとその他の原因の違いは?
(1) Lateral compartment stiffness (LCS)
LCSとは、「 膝後外側構成体の拘縮あるいは滑走不全による膝外側コンパートメ ントのStiffness」 を意味しており、 これにより膝伸展域では脛骨外頼の大腿骨外頼に対する前方移動制 限(伸展制限) が起こる。
外側コンパートメントとは: 大腿外頼と脛骨外顆上関節面の間の関節
LCS をきたす要因
・外側側副靭帯の外側関節包や膝窩筋腱、 大腿二頭筋との癒着または滑走不全
・腸脛靭帯の大腿骨外顆上または膝蓋下脂肪体上の滑走不全
・膝後外側における腓腹筋外側頭、 関節包、 膝窩筋腱、 弓状靭帯などの癒着または滑走不全
・大腿骨に対する脛骨の後外方への偏位
・後外側部に貯留した腫脹
(2) その他の要因
DAnteromedial rotatory instability(AMRI)
膝関節の前内方回旋不安定性を意味する。
これは脛骨内側頼が前方に異常に偏位する 不安定性である。
これは脛骨内側頼が前方に異常に偏位する 不安定性である。
原因・・・ 前十字靭帯 (ACL) や内側側副靭帯 (MCL) のほか、 MCL 深層、 内側半月板、 後斜靭帯などの損傷
Posterolataral rotatory instability(PLRI)
下腿外旋に伴い大腿骨外頼に対する脛骨外顆の後外方への過剰な偏 位を呈する不安定性を意味する。
外旋異常を呈する原因
① 関節不安定性を認めず LCS が単独に存在
② LCS AMRI が合併
③ LCS と PLRI が合併
④ LCS AMRI・PLRI が合併
① 関節不安定性を認めず LCS が単独に存在
関節不安定性を認めず LCS が単独に存在 この場合、LCS による外側コンパートメントの伸展制限により、 膝最終伸展域において 下腿外旋方向への回旋モーメントが生ずるが、 内側構成体の緊張により下腿外旋を制動 している状態と考えられる。
このため、結果として最終伸展域での下腿の外旋は小さく、軽度の伸展制限を呈しやすい。 このような状態で、最終伸展域に至るような大腿四頭筋 の収縮や無理な伸展可動域訓練によって伸展強制を繰り返すと、下腿外旋を制動している内側構成体を伸張して、二次的に AMRIを増強させLCS をもたらしている膝外側構 成体を強く緊張させることになる。
さらに、 外側構成体の緊張は腸脛靭帯や大腿二頭筋、 外側広筋、外側膝蓋支帯などの緊張を高め、 膝蓋大腿関節の運動にも影響を及ぼす。
② LCS と AMRI が合併
膝伸展時にLCS がもたらす外旋モーメントに対し、 内側構成体が外旋を制動できない 状態にある。
このため最終伸展位では脛骨内頼がやや前方移動した状態になり、 正常よりも脛骨粗面はやや前外側に位置した状態となる。
さらに他動的に過伸転を強制す ことから、 過伸展を制動する他の組織にも強い伸張ストレスを及ぼすことが推 測されると、脛骨粗面が前外方に移動し、 AMRI をさらに増強しつつ外旋 過伸展を強める。
③ LCS と PLRI が合併
この場合、 膝最終伸展位では脛骨内側頼は正常であるのに対し、 脛骨外側頼は後方に落ち込む。
軽度屈曲域では大腿膝蓋靭帯の遊びが大きくなるためPLRIが顕 著に認められる。
脛骨の後方偏位により外側構成体の走行も変化し、腸脛靭帯が後方の大腿二頭筋と接近して互いに緊張を強め合い、膝最終伸展位でも腸脛靭帯が大腿骨外側上顆の後方に位置したままの状態になり、 それがさらに外側構成体の緊張を強めてLCSを強化する。
④ LCS と AMRI・PLRI が合併
このタイプは上記の①~③ のいずれのパターンも起こりうる状態にある。
特に AMR とPLRI のどちらが強く反映するかにより疼痛発生パターンなども異なる。
Unsplashのsemen zhuravlevが撮影した写真 アイキャッチ写真